-- あの頃はまだシグネチャーブームでしたよね。
「90年代はまだコラボレーションっていうのがなくて、フットロッカーとかのチェーンストアで出た別注が『日本未発売モデル』だって盛り上がっていたんです。日本でも定番の[new balance]の『576』のチョコレートカラーとか、[adidas]の『スーパースター(SS)』の黒白バージョンも元々フットロッカーの別注で出てたものだったりして。それが90年代のヴィンテージブームや渋カジでもてはやされたり、再フォーカスされたり。90年代って、80年代にあったスニーカーが再評価されて盛り上がったものも多い時代なんですよね。[adidas]の『キャンパス(CP)』なんかは、ビースティ・ボーイズが90年代にデッドストックを履き出したのがきっかけで、その後に盛り上がったモデル。あと日本ではヴィンテージ・ファッションも盛り上がっていて、そういう中で評価されるシューズも出てきたり」-- そういう点では、ファッションとカルチャーがちゃんとリンクしていて、そこにさらにスニーカーがバイアスかけたみたいな感じですよね。
「それは今でもあるんですよね。音楽の好みのジャンルがみんな違ったとして、スニーカーを履かない人はいないですよね。でもその人にはその人のブランドスタイルがあって、モードっぽい格好にスニーカーを合わせるスタイルもあるし、ストリートでもスニーカーのシルエット、ブランド、種類によって違ってきたりしますから」-- いま90年代のスニーカーが再評価されているのって、何故だと思いますか?
「まずメーカーが復刻を始めたところがありますよね。スポーツブランドは『私たちはイノベートしているから過去を振り返られないで進化するんだ』と言っていたんです。でも2000年に入ったら流れが変わって、復刻が出てきました。スポーツブランドなんですけど、ライフスタイルシューズみたいなものも出てきていますし。いまは当時のデザインをベースに最新のテクノロジーを融合したモデルも多いですよね」-- 国井さんと言えばMastered.jPのブログでも必ず4文字熟語でタイトル作っていらっしゃいますけど、いま90年代スニーカーを表現するとしたら、何になりますか?
「今のこのモデルたちは、“懐古主義”ではなくて“温故知新”っていう言葉が当てはまるんじゃないですか。今回ここに出したものは単なる90年代の復刻モデルだけではないですし、90年代に再評価されて、いままた評価されているモデルもあるので。そういう“自由度”が90年代らしさでもあるんですよね」- 国井栄之 mita sneakers / Creative Director