master-piece presents
「僕らの工場計画」

 それから数日後、早速マスターピースから電話が来た。面接の日程確認の連絡だった。僕は面接当日、仕事を休んだ。無遅刻、無欠席が取り柄だった僕が風邪で調子が悪いと嘘をつき、会社を休んだ。少し罪悪感は感じたけど・・・・

 「そんなことよりも今は面接や!」

 両頬を掌でパンッと叩き、気合いを入れた。

 ズラッとサンプルが並ぶマスターピースのショールーム。今まで僕が作ってきたカバンとはターゲットが違い過ぎる。より緊張感が増してしまった。

 企画の募集ということで面接はマスターピース・ディレクターの冨士松さんが担当だった。雑誌で何度か見たことがある。

 目の前にすると緊張が止まらない・・・・

 さっきから緊張と呼吸しかしてない・・・大丈夫か、僕。

 「前は職人をやっていたんですか?」

 冨士松さんに尋ねられた。

 「はい!三年ほどやっています。」

 実はこういう問いかけも必ずあると思い、自分で作ったバッグを持って来ていた。

 僕は紙袋から自分で作ったバッグを出した。

 「これ自分で縫いました!」

 「なるほど。」

 冨士松さんはじっと僕の自作のバッグを見始めた。

 工場では残業とか居残りすることが難しくなっていたけど、少し前まではよく残って練習の為に自作でバッグを縫っていた。

 冨士松さんに見られるのは緊張する・・・・何か言われたらどうしよう・・・・これがきっかけで落ちたらどうしよう・・・・正直、怖くなった・・・・

 冨士松さんはじっと見続けていたが、何も言わずに席を立った。