master-piece presents
「僕らの工場計画」

 まじで? ダメだったかな? 僕の作ったものはやっぱり少しテイストが違ったのかな?

 色々と考えてしまう。正直、今はマイナスのことしか考えられなくなっている。

 冨士松さんは棚から商品のサンプルを持ってきた。

 「惠さん、これって作るの難しいですか?」

 冨士松さんはマスターピースのボストンバッグのハンドルを見せながら僕に問いかけてきた。

 これは試験!? どうしよう、間違っていたら。

 先程から思考が完璧にマイナスになっている。このままじゃダメだ。

 正直に思ったことを伝えよう・・・・

 「ここのハンドルのコバはもう少し研磨するともっと綺麗にできます!」

 ええーーーい、ままよ!!!

 僕がそう伝えると、冨士松さんは

 「なるほどね。」

 そう一言つぶやいた。

 「惠さん、聞いてもらえますか?」

 冨士松さんは言葉を続けた。

 「モノ作りが海外生産にシフトする中、職人たちも苦労しています。私自身、工場の方々と話をする中でリアルに感じていることです。このままでは職人たちが今まで守ってきた、日本のカバン製造における技術と伝統が失われてしまう。惠さんみたいな若い職人も減っている。だから、私はマスターピースの自社工場を立ち上げようと考えているんです。若い職人も積極的に育てられるような、そして周囲の工場も巻き込んで業界を盛り上げていけるような工場を作りたいんです。それこそが日本の技術と伝統を守ることに繋がると思うんです。」

 僕は冨士松さんの話に聞き入った。

 「MADE IN JAPANを守るための工場、無いんやったら作ればええ。」

 冨士松さんの言葉は僕の心に刺さっていた。

 僕も冨士松さんに話をした。自分の働いている工場のこと、自分が思っている事。