僕との面接の後、冨士松さんは色々と工場立ち上げの為の協力者を探していたようだ。野村社長の他、ベテラン職人の松尾さんも協力してくれると言う。松尾さんはベテランの職人で、かなりの腕が利く上に様々な知識も持っている方だそうだ。
工場を立ち上げるプロジェクトは若手の僕と野村さん、ベテラン職人の松尾さん達を含めて五名で始める事となった。
「ついに始まる。」
僕はこれからの仕事と出会いに心を弾ませていた。僕らが作り上げるマスターピースの工場。きっと、上手くいく。
それから、松尾さんのご好意により、松尾さんの自宅にあるミシン数台で作業を始めることになった。お世辞にも工場とは呼べない、民家の一室。僕らのモノ作りはここから始まった。僕はこのことを生涯忘れないだろう。
与えられたミシンのスイッチを入れ、足元のペダルを踏み込んだ。
「ダダダダダダダダダダダダ・・・・」
まだまだ、人数の少ない静かで小さな工場に、ミシンの音が響き始めた。
(第一章・終)
(第二章につづく)