彼ら新人はやはり、これからの工場シーンでの宝だ。
大切に育てていかないと。
「惠さん、また工場に職人志望の子から電話がありましたよ。」
鶴川くんだ。工場長として、面接などは彼が対応している。
「おー!最近そういう電話多いなー。」
マスターピースの自社工場として、六年近くやってきてようやくこの工場も定着してきた。
雑誌などでの掲載で特集を組んでもらうことも多くなり、この工場という存在が世の中に広まってきているのは嬉しい事だ。
僕らが工場を立ち上げたのは、衰退していく日本の工場事情に一石を投じる為。
そしてベテラン職人から若手職人に日本で培われてきたカバンの技術をきちんと伝承して、技術を後世に受け継いでいくこと。
その目的は現在進行形中で、まだまだこの先もきっと終わることなどない。
いつも何かの始まりなんだ。
「おし!今回は僕も面接官に入ろうかな!」
「え、惠さんが面接入るんですか?(笑)」
「あ、鶴川くん笑ったな?(笑)」
僕が面接を受けた時みたいに、きっとこの電話の子も緊張して面接に来るんだろうな。
この先、そういう子たちを何人見ていくんだろうか。
たぶん、僕は見る度に思い出すんだと思う。
僕らの工場計画が始まったあの日のことを・・・・
「僕らの工場計画(終)」