小さい頃から培ってきたセンスと、努力して得た技術があるのでサンプル師としてとても有能だ。実際、今回のこの下地である加工前のレザーを使ったサンプルに関しても上手いことビンテージ感を演出している。
僕は山根さんに今回のいきさつや、問題がなく、良い雰囲気でサンプルをあげれていたことを説明した。
「あぁ、そういう企画なのだとしたら問題ないだろう・・・すまんね。普通はあまり使用しない下地のレザーがいきなり裁断場に運ばれてきたもんだから驚いたよ(笑)」
そりゃ、そうだ。
マスターピースの生地は普通のブランドでは用いないようなものを使用することが多い。
山根さんが驚いたのも至極当然なことだろう。
「山根さん、きちんとした説明もなくてすいません。僕たちもまだまだコミュニケーション不足だということを認識して、今度からはきちんとこの辺に関しても企画のたびに説明します!」
「あぁ、ありがたいよ。せっかく同じ場所で縫製と裁断を行えるんだ!きちんとお互いにコンセンサスをとってやろう!そっちの方がいいモノづくりができるはずだ。」
山根さんはニコッと笑った。やはりベテラン職人たちの意識はプロだ。
僕らはこういうプロ意識の中で色々と勉強をさせてもらうことが多い。
「はい!一緒に頑張っていきましょう!」
BASE大阪と工場に名前が付いた時から僕らの工場はかなり一般的な工場レベルにはなっていたと思う。
ベテラン職人と若手職人が共存する工場、桂くんのような専門学校からの新卒の若者も入ってきた。
本当に短い間に色々あった。