• #1.Sade 『lovers live』

    多くのミュージシャンと同じく思うようにライブができない1年だった事もあり、よく、ライブをする事を夢見て”ライブアルバム”を聴いた1年でした。3枚揃ってライブアルバムでいきます。1枚目から、「いまさらシャーデーかよ、みんな知ってるわ」と突っ込まれそうですが、何年経ってもシャーデーがあの日にステージから放ってくれた愛のビーム光線を忘れられません。そう、このアルバム収録の日、僕は現場での目撃者でした。”Kiss Of Life”の決して派手なわけではないintroが流れてきた時、僕の前に座っていた男同士と女同士のカップルさん(おそらく4人友達なのかな)が立ち上がり、なんと接吻を始めました。当時、男女の接吻すら目の前で見たことのないウブな僕は、ダブルの衝撃に言葉を失いながらも、ホールの天井から降ってくるシャーデーの声とフロアから忍び込んでくるバンドのGROOVEを感じながら幸せな放心にひたりました。このままLGBTQの話になりそうですが、ここでは言及しません(笑)。いまでは、ゲイの友達といる時にその日のことをよく笑い話でします。とにかく、「音楽ってば、愛の音なんだな」なんて本気で感じた日で、今までに観た最も記憶に残るライブのひとつとなりました。

  • #2.Donny Hathaway 『Live』

    これも「いまさらかよ!」と更に突っ込まれそうですが、僕は結局コレがやりたいのかもしれないな、なんて思うことがある。ミュージシャンってのはいつの間にか”なって”いるもので、なんかのチケットが発行されて、私はミュージシャンです、私はアーティストです、って運びになるわけではありません。なので僕も、いつの間にかミュージシャンになった、その”いつ”を忘れてしまいそうになりますが、このライブは、僕にとって教科書のようなもので、勝手にそう感じているんですが、ダニーの歌声は言わずもがな、演奏、観客の熱気、ソウル、センス、聴こえてくる全てがクールでホットで、かっこよくて感動するアルバムで、こんなライブをいつかやりたい! こんなミュージシャンになりたい! なんて20代の頃は特に目指してました。僕の中では、どちらかに傾くんですよね、クールだと熱さが足りなかったり、かっこいいと感動とは少し異質で共存しにくかったり、しかし、このアルバムは僕の中ではそういった欲しい両面のあるアルバムなんです。ライブが近くなった時、嬉しい時、寂しい時、悔しい時、へこんでる時、へこみたい時、聴きます。

  • #3.山下達郎 『IT'S A POPPIN' TIME』

    ”いまさら”3部作、最終アルバムは、僕の中では、「生ける現人神、貴方こそ希望という名の光だ!」でおなじみの、タツロー大先生、至高のライブアルバムでいきましょう。僕は未だに、ブレイク直前の70年代までの”FUNKタツロー”を精神的に追いかけている節があります。タツローファンならずとも熱狂するライブアルバム『JOY』は、未だモンスターライブアルバムとして君臨しているとは思いますし、アナログバーなんかでよく流れるのも圧倒的に『JOY』の方ですし、僕自身も聴いた回数は『JOY』のほうが多いかもしれません。しかし、このライブアルバムは、日本最高峰のスタジオミュージシャンをバックに引っさげ、GROOVEしまくる化け物級の”ミュージシャン”としてのタツローさんの細部まで感じられる、それこそダニーのライブにも通ずる、”FUNKタツロー”のドキュメンタリーの記録として、いつも僕を癒し、打ちのめしてくれます。2020年も沢山聴きましたよ!