#1. Kendrick Lamar 『To Pimp a Butterfly』

退屈なチョイスだなー。と自分の中の天の邪鬼が言ってはいるものの、やはり2015年という年はこの作品がすべての中心にあったと思います。しかも、誰もかなうことが出来ない高みに屹立していた。原宿〈BIG LOVE〉の仲真史さんと話した時に、彼が「音楽は勝ち負けなんですけど」という名言をポロリとこぼしていたんですが、すべての音楽家はこのアルバムに勝たなければならない。思わず、そう言わずにはいられないほどの高みにこのアルバムはあります。まぎれもなく21世紀を代表する1枚だと思います。

#2. KOHH『DIRT』

彼のラップやフロウをUSヒップホップのパクリだと言うのは簡単です。ただそうした文脈を是とするなら、日本のポップ史に燦然と輝くはっぴいえんど諸作もただのパクリだと言えるかもしれない。ただ実際のところ、どちらも形は違えど、この島国特有の訛りを用いながら、誰も聴いたことのなかった響きを生み出すことに成功している。ポップ音楽とは引用の歴史であり、継承の歴史であり、何よりも再定義の歴史です。オリジナリティとはそうしたプロセスの中からのみ産み落とされるものです。それゆえ、この作品から感じずにはいられないのは、こんな実感かもしれません。ローカライズされているからこそ、ユニバーサルな言語たりえる。このアルバムは、誰も聴いたことのなかった日本語の響きとさまざまな意味のせめぎ合いの中から、胸を掻き乱すような唯一無二のエモーションを聴かせてくれました。とにかくグッと来たし、思わず「かっちょいいー!」と何度も叫びそうになった。2015年、この国で生まれたすべての作品の中ではこのアルバムがピカイチだったと思います。

#3. Leon Bridges『Coming Home』

2015年は10代の頃の自分が、最初は白人の音楽に夢中になり、その後、彼らのルーツであるアフロ・アメリカンの音楽にさらに夢中になっていった頃のことを思い出させる年でした。そういう意味では本当に最高の年。そんなわけで、3枚目はこのアルバムにするか、ジャズミン・サリヴァンの『リアリティ・ショー』にしようかどうか迷いました。でも、最終的にはこの「2010年代のサム・クック」のデビュー・アルバムを。ケンドリック・ラマーがいて、ディアンジェロがいて、ミゲルがいて、ハイエイタス・カイヨーテがいて、カマシ・ワシントンがいて、タイヨンダイ・ブラクソンがいて、ソンゴイ・ブルーズがいてーー名前を挙げればきりがありませんが、何かしらアフリカ大陸に起源や繋がりを持つ作家たちが傑作を生み出した、しかも、そのサウンドは多岐に渡っていた、そのことから受け取ることの出来る興奮はとても貴重なものでした。

このリストは非常に個人的なものですが、よりオフィシャルなステートメントとしては、僕自身も関わっている音楽サイト、サインマグの年間ベスト・アルバム50があります。良かったら参考にして下さい。どんな方でも何かしらの発見のあるリストだと思います。

http://thesignmagazine.com/features/best2015/

選んでくれた人

田中宗一郎
the sign magazine/SNOOZER

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